確率の問題再考 「ある家庭の子供2人のうち,1人は男であることがわかっている.このとき…」


「ある家庭の子供2人のうち,1人は男であることがわかっている.このとき,もう1人が男である確率は?」

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確率の分野でとても有名な問題のひとつの表現です.確率の入門書に限らず,この手のパズルを紹介する書物などでもよく見かけ,またインターネット上の様々なコミュニティで定期的に話題になります.
Yahoo!知恵袋でも検索をかけると数十件程度同じ内容の質問が並んでいたりします.テレビ番組で取り上げられたこともあるようですね.

なんやかんやと炎上したあげく,答えは1/3だという結論に達するのが定番の流れです.

私はこの問題,いつも間違ってるんじゃないか?と思っています.少なくとも問題文に矛盾があって,答えを1/3とするのは乱暴すぎるような気がしています.


まず挙げられる(間違いとされる)答えは

「性別なんてもう片方の性別には関係していない.だから1/2だ」

というものです.これに対する反論はだいたい以下のようになります.

「想定されるパターンは(男,男),(男,女),(女,男),(女,女)の4種類である.このうち4番目は問題文より除外されるので,残り3パターンから考えて1/3だ」

この説明は一見正しそうに見えます.ただ,上の説明で問題文の「もう1人が男」を考えるとどうにも不穏な空気が漂い始めます.特に(男,男)のときのもう1人ってどっちでしょう?


問題文を見てみると,問題文前半では単に「1人は~である」という表現が使われているだけです.これは(答えを1/3とする文脈では)「~という人が1人以上いる」と言っているだけであり,特定の人のことは何も記述していません.じゃあその後に続く「もう1人」は?と考えると,そんなものは定義できないことがわかります.
(問題文のつじつまをあわせるなら,「1人は男である」を特定の人にすることになり,答えは1/2になるでしょう.この場合は上の誤答とされていた表現もすんなりくると思います.)

この記述のおかしさは男女というどちらも起こりそうな現象で考えると気づきにくいですが,もっと確率の偏った出来事に置き換えて書けば雰囲気が変わります.

「太陽と月のうち少なくとも片方は東から出て西に沈む.もう片方は~」

と書くと,いやいや,もう片方なんてないでしょう,となると思います.(前半の文には特に間違いはありません.)

出題者の意向通り答えを1/3としたいなら,問題文は「両方男である確率は?」としないとおかしくなります.細かい違いのようですが意味が全然変わってきます.

 

以前Slashdotに載った記事で「子供が二人いて、(少なくとも) 一人は火曜日生まれの男の子である。もう一人の子供も男の子である確率は ?」という問題を扱うものがありました.

問題の原文は “I have two children, one of whom is a son born on a Tuesday. What is the probability that I have two boys?” となっており,問題はなさそうです.
ところが英語版の記事に転載された段階で “What’s the probability that my other child is a boy?“となってしまい,ここから変な話が始まってしまっています.

(ちなみに原文での答えは13/27になります.これは火曜日という一見どうでもよさそうな条件が答えに影響するという点に面白さがある,と紹介されています.考えてみて下さい.)


まあこんなのは言葉遊びだと言われればそうかもしれませんが,一度問題を正しく把握してしまえばあとは適当な手段で計算するだけなのであって,その段階に落としこむまでのほうが大事であることはよくあることではないかと思います.

私が一番気になったのは,こういう質問に答える側の人があまりこういう議論(問題文に矛盾がある,とか)をしないのだなと思ったことです.元が有名な問題なのでたぶんどこかで聞いた/議論した答えを輸入しているのだと思いますが,もし正しい答えとされるものを十分な吟味なしに「正しい答え」として広めているのであれば,それは自分の出した答えが間違っている以上に危険なことではないかと私は思います.


後輩向け: 卒論の研究室の選び方まとめ


図書館

どの本をとるべきか?

ちょっとした事情でwebサーバーを止めていましたが,復活させました.

私の大学の工学部機械系2学科は4年生の4月に卒論の研究室配属が行われます.研究室からすれば毎年の行事ですが,当の4年生にしてみれば大事なイベントです.
4年生は例年この時期になるとどの研究室がいいかとか,この研究室は誰が志望しているだろうかとか,そういう話があちこちで聞かれるようになります.

一方で,いったい何を基準に選べばいいのか4年生にはよくわからないところもあります.これは研究室が遠くて雰囲気が伝わりにくい(らしい)ことと,そもそも研究生活をしたことがない以上何を重視すればいいのか知りようがないというのがあると思います.

もちろん研究テーマや研究室の専門は大事ですが,機械系は研究室の数がとても多く,また興味のある内容が広い人もいるため,なかなか決めきれない人も多いと思います.
かなりの人数が修士課程まで進むことを考えると,研究室選びというのは大学時代の後半3年間を決める大事なイベントでもあるわけです.

というわけで,新4年生向けに研究室選びに役に立つかもしれない情報をいくつか集めてみました.


念の為に言っておきますが,ここの内容は「何がある研究室は悪い」とか「こういう性格の研究室が良い」とかそういうことを書くつもりではありません.(なるべくニュートラルな立場を取ろうと努めています.)
選ぶときの目安としてどんな違いがあるのかの例を見せられたらと思っています.


まず身近なところで,私の指導教員がいくつか指標を用意してくれています.

  1. 4年生が修士で同じ研究室に進学しているか?
    修士の定員が少ない場合や,研究室が外部に有名で外部受験生が多い場合など例外もあります.また機械情報は(というか情報理工学系は?)院試の出願時に修士の指導教員まで決めてしまい時間がないため,基本的に卒論配属とおおよそ同じ志望になっていると思います.
  2. OBが研究室に出入りしているか? OBとの交流が活発か?
    OB以外にも,他の研究室の先生やメンバーなどとの交流も聞いてみましょう.つながりをもっている研究室もあります.
  3. 教授との相性
    人間同士なので,あまり他人の意見に流され過ぎないように.

 

next49さんのブログの「大学院修士向け研究室情報チェックリスト」にも,研究室選びについて様々なことが述べられています.修士向けとありますが卒論生向けでも問題ありません.この方は大学の教員で,他にも数多くの卒論生向けのエントリー研究全般についてのエントリーがありますので参考になるかと思います.

いくつか抜粋してみます.

  1. 実験系か理論系か。拘束時間や研究のスタイルが大きくことなる
    実験系は分野にもよりますが,機械の都合や故障などで一時的に時間が制限される場合があります.
    両方扱う研究室もありますが,片方だけの場合はもう片方とどういう関係を持ってるのか調べてみてもいいかもしれません.
  2. そもそも研究室のメンバーは何人か?
    人数が多いと研究室内でいくつかの研究グループに分割されていたりします.指導教員との距離感に影響します.もちろん人によって丁度良い距離があると思います.
    学生が多ければ教員の人数も増えますが,どちらかに比率が偏っている場合は,どういう理由があるのか考えてみてもいいでしょう.
  3. 管理か放任か
    機械系でコアタイムのある研究室はそれほどないと思いますが,週次イベントの数や時間はまちまちです.
    たいてい週のどこかで研究会があります.それ以外にもグループミーティングがある場合なども多いです.他にも例えば機械情報(正確には知能機械情報学専攻)の研究室は必修科目として研究室輪講があります.
  4. メンバーの多様性はどうか?(出身校、学部は、属していたサークル、人種、出身国、地域など)
    留学生の人数や結びつきの強い国などにはけっこうばらつきがあります.
    また,修士課程などで複数の枠を持っている研究室があります.機械系に近い分野だと創造情報学専攻,学際情報学府,バイオエンジニアリング専攻などがあります.研究室の多様性もそうですが,院試の入り口が複数になる場合もあります.

 

他にも,せっかくなのでいくつか見ておくとおもしろいかなと思うものを挙げておきます.

  1.  卒論生の面倒を見る人
    教授や准教授であったり,助教であったり,あるいはドクターであったり,比率は研究室で様々です.
  2. (研究テーマ設定などで)どれくらいの自由度があるのか?
    例えば研究室として大きなプロジェクトに関わっていたりすると,4年生もそれに合流して研究の一部を担当したりすることがよくあります.これもどちらのスタイルがよいかは個人差があります.
    テーマと問題点が決まっている方がもちろん研究は進みやすく,おそらく知識の吸収もしやすくなります.一方でテーマと問題点の設定というのは研究においてとても重要なプロセスで(一番大事という人もいる),避けては通れません.一方でそれには深い知識が必要で…と,鶏と卵みたいな関係になっている気がします.
  3. 研究室の入りやすさ
    「部外者は基本的に禁止」から比較的開放的な研究室まで様々です.研究室の方針が垣間見えます.
  4. 同期のメンバー
    後輩の好きな先輩というのも多分たくさんいますが,なんだかんだで困ったときには同期が一番頼りになります.仲のいい人がいるからというのも,必ずしも理由にならないわけではないと思います.
    これもきっと性格によりますね.

 


他にも違いを考えだすときりがありませんが,入ってみないとわからないこともたくさんあるので,あんまり深く悩みすぎないようにしましょう.研究室の形態も毎年どんどん変わっていきます.
先生方は皆とんでもなく優秀で,やりたいと思えばいくらでも力になってもらえるはずです.

研究室選びと4月からの研究生活,肩の力を入れすぎずにがんばってください.


男子トイレの力学


知性は、方法や道具に対しては鋭い鑑識眼を持っていますが、目的や価値については盲目です。 – アインシュタイン

大学院の夏学期の授業で自由課題が出たのですが,その提出物を授業で発表することになりました.

課題で愉快な結果が出たわけでもないのですが,せっかくなのでそのとき作ったプログラムとその結果を書き留めておきます.
テーマは「モンテカルロ法」.何か身近な問題についてシミュレーションを行ってこいとのことでした.

モンテカルロ法は乱択アルゴリズムの一種です.ざっくり言ってしまえばたくさんやってみて統計をとるという方法ですね.
コンピュータのくせに「答えは厳密ではないが,たぶんだいたい合ってる」という結果の出方が大好きです.

さて,たくさんのものをぼんやり見る…となるとやはり気になるのは人の群れのシミュレーションです.人って群れると不思議な振る舞いをしますよね.
研究となると面倒な分野ですが,授業の課題なら気にせず変なことができます.

それで扱う現象ですが,人って誰かの隣には座らないんですよね.電車などに乗っているとよく見る景色です.
これは映画館とか大学の講義でも同じで,隣が開いてる席があったらそっちを使うというのが人間というものの性質のようです.

男子トイレでも同じことが起きますね.大きなトイレでがら空きなら誰かの隣の便器というのは普通使いません.もしがらがらのトイレで隣に人がやってきたら,何か他の目的があるのではという考えが頭をよぎります.

で,あのふるまいのシミュレーションをしてみようと思ったわけです.


トイレのモデルは以下のようになります.

便器の数をn個として,そこに人が次々と到着します.各個人の便器使用時間はガウス分布,到着時間はポアソン到着としています.

各個人は両隣が空いている便器があればそれを,なければそれ以外の便器を使います.全部埋まっていたら待ち行列に並びます.待ち行列の人は便器が空き次第詰めていきます.
同程度の魅力の便器があればランダムに選びます.

パラメータは便器数n, 便器使用時間の平均μおよび標準偏差σ,それと平均到着時間間隔λとなります.
便器使用時間についてはどこかにデータがあればよかったのですが,見つからなかったので自分で1週間計測しました.
平均は20秒,標準偏差は3秒となりました.今回は両側に3秒追加して26±3秒としてシミュレーションを行いました.


n=5として平均到着時間間隔λを変化させた結果が以下になります.右の番号はトイレの便器ですね.端から順に1から5です.

n=5

横軸は到着頻度(λ)になります.左端は人が来ない状況で,右に行くにつれてトイレが賑わっていきます.右端は常にトイレが使われているという相当やばい状態ですね.現実にこんなトイレがあったら早いところ増設したほうが事故を未然に防げていいと思います.

人がとてもまばらな時は,どの便器も同様に使われます.また相当混んでいる時も同様に使われます.
まあ他人がいなければ区別なく使いますし,混んでる時は選ぶ余地もなく全部使われてるので当然とも言えます.

問題はこの中間のときで,ちょうど限界の半分くらいの人が押し寄せるときに便器の使用頻度に差が生じます.
端のトイレが比較的よく使われる一方で,端から2番目のトイレ(2,4)の使用頻度は落ちています.おそらく端っこは隣が片方しかないため,そこそこ混んでいても入りやすいのだと思います.それでその隣は使われないのでしょうね.

以下が便器の数n=31とした結果です.大きなトイレですね.

n=31

多くの便器達はおおよそグラフの中央に集まっています.これは便器ごとに使用率が変わらないことを意味しています.
一方で上に大きく曲がった線が2本あります.これが両端の便器です.使用率は他のものに対して有意に高くなっています.
下の2本は端から2番目の便器になります.こちらは使われにくくなっていますね.

現実問題を表現できていますかね?
今度駅とかのトイレに行ったときは便器の使用状況に気をつけてみるのもいいかもしれません.


この結果から何がわかるか?というと,まあせいぜい端の便器は汚れてるかもしれないよ,ということくらいです.
まあトイレに限らずなんでもそうかもしれません.大学の教室の椅子でも5席あったら1,5番目,詰まったらその後3番目から埋まりますね.

これ自体は非常に単純なシミュレーションですが,簡単な仮定をおくだけでこのようなデータが得られるのがシミュレーションの面白いところです.
気軽にコードが書けるとこういった遊びの幅も広がります.

コメントも書いてないものですが一応ソースコードを置いておきます.Visual Studio 2010で作ったものですが単純なC++のコードなのでだいたいの環境で動くと思います.

restroom

発表に使った資料も置いておきます.後半は違う話になっていますがいずれここで書けたら面白いかなと思っています.

マルチスケール課題1

シミュレーションの内容に補足をすると,今回はキネティックモンテカルロ法という手法になっています.これは扱う時間のスケールに対して稀な現象を含めて扱うときに使われる手法のひとつで,系で起きるイベントをリストアップし,次のイベントまでにかかる時間を計算してイベント単位で時間を進めていく方法です.

また,このコードにはトイレの待ち行列が伸びすぎるとクラッシュする機能があります.シミュレーションとはいえあんまり我慢させるのはかわいそうですから.

ちなみにトイレシミュレータの原案は昨年の研究室の先輩方でした.先輩方ありがとうございました.


[昔話] 振り子のシミュレーションをした話


今回は真面目系の話.駒場時代の昔話です.

[追記] プログラムを作り直しました。 [作ってみた] [プログラミング] 剛体3重振り子

シミュレーションの課題をやる元気が出ないので昔話を書いてモチベーションを上げようという魂胆です.

東大の理系1・2年には物理実験という授業があります.毎週1回何かを実験して,その結果をまとめて先生に報告したら終了というものですね.

報告はたいてい他の人と時間が重なるので,待機用に控え室というのが用意されています.
で,この部屋,いったい誰が作ったのかわかりませんが物理っぽいおもちゃがたくさん取り揃えてあります.でっかいジャイロと回転台とか,ニュートンのゆりかごとか,そういう類のものです.

ニュートンのゆりかご(wikipedia)

 

その中でひときわごつくて目を引いたのが,金属製の振り子でした.もっと丁寧にいうと「剛体3重振り子」というもので,回転する棒の先に棒が,またその先に棒がついた形をした細長い振り子です.

これの遊び方は?
先をつまみ上げて落とすだけです.

じゃあ何がおもしろいのか,というと,振り子の挙動です.ふつう振り子というのは左右にゆっさゆっさと揺れるものですが,この振り子は訳の分からない運動を始めます.全体でぐるんぐるん回ったかと思えば突然暴れだしたり,かと思えば先の棒だけが超高速で回りだしたりします.

以下は剛体2重振り子ですが,雰囲気は伝わると思います.

 

「連成振り子の運動」というのは大学数学では定番の練習問題で,たいていは複雑に見える運動も実は計算してみると単振動の組み合わせでしたね,という結論が待っています.もう大学の授業でかれこれ6回は見た気がします.

そんな中奇妙な振る舞いをする振り子が登場するわけです.中に奇妙なカラクリがあるとかならわかりますが,眼の前にあるのはただ棒が3本つながっただけの代物です.複雑な現象も単純に表されるんだよと言われていた矢先にこれです.

納得していたものが頭の中から吹き飛ぶ感覚はある意味快感ですらありました.

 


さて,実験の報告も終わって帰ってきて,まあこのわけのわからないものを 理解してやろうじゃないか,理論的に記述してやろうじゃないか,となるわけです.

まあそうやって書けばなんかモチベーション高い感じですが,別に目標があったわけでもなく,遊びみたいなものです.

ただし解析的に解けないのはわかっていたため,そこは数値計算で,となります.コンピュータの出番です.
丁度この頃力学はLagrange形式までやっていましたし,プログラミングも一応授業で最低限には習っていました.

となると,残りは微分方程式の数値計算法です.数値計算の分野にはこの頃はじめて出会ったことになります.
数値計算というのはおもしろい分野で,微分とか積分とかの抽象的な数学の問題を,単純な計算作業に落としこむ方法を与えてくれます.

それだけといえばそれだけですが,運動方程式,つまりこの世界そのものを足し算とかけ算だけの世界に引きずり込むという芸当ができるわけです.神様お試し版です.昔そんな映画もありましたね.

で,あれこれ式を書いていくと,最後に”あの”わけのわからない動きが手元ですっかり再現できるようになるわけです.

お手製のプログラムで自分でもよくわからなかった運動を再現するというのはなかなかおもしろいものです.自分で世界を作る感覚,シムシティと同じです.

当時作ったプログラムが公開できたらよかったのですが,ちょっと今手元にないためまた後で用意したいと思います.
かわりにyoutubeにあったものをはっておきます.

2重,3重振り子はカオスの例として有名なんですね.

 


こんな日を経験してから,計算力学という分野にある程度関心をもつようになります.なんか新しい物性とか流れとかちょっと複雑なことを考えたいときは理論式だけではなく計算機がボトルネックになるのではないか,なんてことをぼんやり考えていたわけです.

私が機械情報工学科に進学することを決めた背景には,このような考えも影響していたのではないかなーと思います.

 

さて,この遊びで作ったプログラムは特に使い道もないしそのままお蔵入りするかと思っていたのですが,ところがどっこい,学部に進学してからまた引っ張りだしてきて新しい要素が組み込まれることになります.

その話はまたいつかできたらと思います.


[作ってみた] [プログラミング] Internet Explorer の正統進化


先日「Google ChromeのシェアがIEを抜いた」などというニュースが流れてきて,第二次ブラウザ戦争も新しい局面を迎えているなあ,などと考える今日この頃です.
ユーザーからすると各社がしのぎを削ってくれるのは大変素晴らしいことでもあります.

さて,アップデートが行われるたびに「大幅に進化したFireFox」「Google Chromeの進化」などと日常的に騒がれるわけですが,それって本当に進化なのでしょうか?

「進化」ということばはしばしば本来の意味からは大きく外れる使い方をされます.ことばなので使い方が変わるのは当然なのですが,こうなると困るのが本来の使い方をしていた人たちです.

進化は、生物の形質が世代を経る中で変化していく現象のことである (Wikipedia)”

とあるように,進化は別に改良されることを指す現象ではありません.大学の生態学の先生が「チンパンジーも時間がたったらヒトになるんですか?」といろんな場で聞かれて返事に困ってしまうと以前話していましたが,確かに某ゲームに親しんで育ってきてしまうとそんな誤謬も発生するのかもしれません.

ブラウザの話に戻りますが,ブラウザにとっては別に使いやすくなることが進化の目的ではありません.基本的には自分の複製を増やす(=大勢の人に使ってもらう)ことが目的であって,使いやすくなることはその手段に過ぎません.ブラウザにとって自己複製/拡大の目的が達せられるなら,ユーザーを裏切ることさえ進化となってよいはずです.

 


前置きが長くなりましたが,本題です.
IE拡張プログラムを作成しました.名付けて「利己的なプラグイン(The Selfish Plugin)」です.

このプラグインを導入すると,ページ内のGoogle Chromeの紹介/ダウンロードページへのリンクが全てIEの紹介ページのリンクに化けます.その他Chromeにまつわるページ(今のところURLにchromeという文字を含む)に全て同じ仕打ちを行います.こんな感じです:


キャプチャなのでマウスポインタがとれていませんが,検索結果のリンク先がIEになっているのがわかるかと思います.

私はIE(を含むブラウザ)について昔から「賢くないなあ」と思うことがあって,それは他のブラウザの安易な紹介です.もし私がIEだったとしたら,ユーザーが検索窓に”Chrome”と打ち込んだとき素直にChromeの紹介を見せるでしょうか?

Noです.絶対にNoです.あの手この手を使って見せまいとするに決まっています.そうでなければ死んでしまいます.

そこでこのプラグインです.この利己的なプラグインにより,IEはユーザーの目的を無視してChromeへのアクセスをなんとか拒否しようとします.積極的でないユーザーならあきらめてくれるかもしれません.
FireFox,Safariその他ブラウザへの対応も同様に可能です.

これで「IEはブラウザダウンロード用ブラウザ」などという不名誉な称号も,擬人化されて涙を流されることもきっとなくなるはずです.

やったねIE.

 

技術的な話をすると,IEの拡張なんて作ったのは初めてで,ただ話的にIEでないとできない内容だったので結局COMプログラミングに挑むことになりました.(コピー参考にしたページ:MSDN).
やっていることは単純なのでコード量的には多くありません.レジストリをいじったり面倒な作業が必要になるので完成品の公開はしませんが,一応クラスのソースだけ置いておきます.[ダウンロード]

 

あ,ちなみに私はFireFoxユーザーです.そんなに極端な使い方はしないのでなんでもよいのですが,ころころ変わると面倒なので合わせてあるだけです.


おいしいカレーの作り方


ブログを始めたらまずはカレーの作り方を書かなければいけないでしょう,ということでおいしいカレーの作り方です.
今回はWordPressの使い方の練習のために書いているようなものなので.内容はほとんどないのであしからず.

 

カレーの作り方,といえばとっさに書ける文章の代名詞です.
「大学のテストでおいしいカレーの作り方を書いたら単位が来た」なんていうジョークよく 聞きますが,私の周りではこのような例はまだ聞いたことがありません.

個人的にはどうしても単位が欲しかったら土下座したほうが効率がいいんじゃないかと思っています.こっちの事例は2件知っていて,片方は必修で追加レポートを課され,もう1つは選択科目で門前払いをされたそうです.土下座が効いたかどうかは微妙ですね.
カレーのレシピではなおさら無理だと思います.シチューでもボルシチでも駄目でしょう.

 

テストとは少し違いますが,「カレーの作り方」の読みものとして今までで出会った中で最も感動したのは,大学の学祭で活動するサークル「無限次☆計画」さんの「カレーライスの作り方」という論文(?)です.
ちょっとまえがきを見てみましょう.

“カレーライスの構成法を記した文章は多いが、あまり厳密に記したも
のはない。…そこでここでは、白米のみをアプリオリに与えられたも
のと考えた上で、丼もの達から成る集合に入る構造を調べ、それらに対
して特定の性質を満たす食べ物としてカレーライスを定義し、簡単な場
合に構成を行う。”

この論文では丼ものの集合について厳密な定義を行い,たし算(複数の丼を並べる)・かけ算(丼に丼をぶっかける)・丼勘定(具の数を数える),その他単位元(白米だけ)・零元(何もない)等も定義しながら話が進みます.
最後に,カレーライスを「何を追加しても変化しない丼(かけ算に対して変化しない元)」と定義してレシピは終了します.

この読み終わっても何も作ることができない感が私は大好きです.
大学数学ならよくあることで,例えば逆行列の定義なんてのはさくさく説明される割に,その作り方についてはこれっぽっちもわからないなんてことがおきるわけですね.
カレーをその世界に持ち込んだことは画期的だと思います.

 

リアルなカレーの話をすると,大学の近くにおいしいカレー屋さんがいくつかあります.ナンで食べたりするやつです.ちょっと割高なので頻繁には行きませんが,以前別の場所で書いたように,手元で書いたプログラムの出力がNaNだらけになったときは気晴らしに行くこともあるでしょう.

NaN (Not a Number) というのはコンピュータの表現するエラー値のようなもので,特別な振る舞いをします.
例えば,この値には何をかけてもNaNになります.NaNにカレーをかけてもNaNです.
コンピュータは理不尽ですね.

 

全然カレーの作り方書いてないですね.
そんな私はハヤシライスが好きです.

今後もよろしくお願いします.


Hello, World.


ぞうさんです.ブログを始めました.
ソビエトロシアではブログがぞうさんを始めます.

テンプレとか見た目はしばらくふらふらすると思います

Twitterには長くなったりして書きづらいようなものをこっちに退避する予定です.そのうち別の使い方も出てくるかもしれませんが.

あれこれ調べながら作ったわけですが,手順がすっかり洗練されていたので驚きました.
当然といえば当然なのですが,ブログひとつ作るのに別にCPUやOSやネットワークに関する知識なんて必要ないわけです.「トランジスタの動作原理から理解する最強ブログの作り方!」なんて本は見たことないわけですね.いやあったら読みたいですけど.
技術の隠蔽とはすごいものです.

まあ何が言いたいかというと,いまどきブログを書くのにOSのインストールから始めるような人はまれだということです.僕は他の用途でも使うので構いませんが.