「抜き打ちテストのパラドックス」を撃破する


「抜き打ちテストのパラドックス」という有名なパラドックスがあるのですが、たいていどの記事でもパラドックスの紹介だけで終わっていて、もやもやするのでこの記事を書きました。
自分の中ではパラドックスのありかがわかっているつもりなのですが、同意見の主張が見つからないので多少気になっているところでもあります。

ドロステ効果

Taken by fdecomite, Flickr


パラドックスの概要

抜き打ちテストのパラドックスというのは、以下のようなものです。

「とある学校、とあるクラスの話。あるとき先生が以下のように言いました。

『来週の月曜から金曜の間に、抜き打ちテストを行います。ただし、君たちはこの抜き打ちテストがいつ行われるか予測できない。』

教室は大騒ぎになりましたが、教室のとある賢い生徒は以下のように推察しました。

『先生はいつテストがあるか予測できないと言ったが、これは重要な点だ。テストは金曜日に行われることはない。なぜなら、金曜日は最後の日だから、木曜日までテストがなかった時点で金曜日だと予測できてしまう。』

『…さらに、木曜日に行われることもあり得ない。なぜなら金曜日にテストがないことがわかった以上、水曜日までにテストがなければ木曜日にテストがあると予測できてしまうからだ。』

『…まったく同様にして、水曜にも、火曜にも、月曜にも行われることはない。つまり抜き打ちテストを来週行うことはできない。』

教室の皆はこの意見に同意し、実際には抜き打ちテストは存在しない、という結論になりました。

そして翌週の月曜日、先生が教室にやって来るなり言いました。

『今から先週予告した抜き打ちテストを行います。』

生徒は口々に言いました。『先生、私たちの推理では今週に抜き打ちテストを行うことはできないはずです!』

先生は落ち着いて返事をしました。 『そして、実際にあなたたちは今日のテストを予測できなかったわけです。』 」


考察その1: 分類

Wikipediaなどの説明では様相論理との関係などが紹介されていますが、どうもそこまで難しい話であるようには思えません。

落ち着いて整理しましょう。
このパラドックスで肝となっているのが、先生の発言「抜き打ちテストがいつ行われるか予測できない」というものです。

注意が必要ですが、これにはふたつの意味のとり方があります。順に見ていきましょう。

・まずひとつが「抜き打ちテストがいつ行われるか、『1度限りでは』予測できない」という主張です。
この場合は生徒の推理が間違っています。木曜日にテストがないことを推理する段階で「金曜日にテストがない」ことを使っていますが、その主張には「金曜日のテストの可否を木曜日に予測する」ことが必要になるからです。1度限りの予測では不可能です。

・もうひとつが「抜き打ちテストがいつ行われるか、『どの段階でも』予測できない」という主張です。
この場合は生徒の推理は問題なさそうです。以降、この場合について考えてみます。


考察その2: 先生への反撃

生徒達は「テストがいつ行われても予測ができる」という結論から先生の主張が矛盾を持っていることを導き出しますが、ここで予測をやめたのでは先生の思う壺です。

ここではもっと単純に、テストの日程を予測して先生に矛盾を突きつけることを考えてみましょう。

予測は簡単です。先の推理から、先生に「テストは月曜日に行われる。予測可能だ。」と言えばいいのです。

月曜日に何もなかったら? そのときは推理に従います。
生徒はこのように先生に言うでしょう。「それはおかしい。なぜなら月曜日にテストがなければ、火曜にテストがあることが予測できるからだ。つまりテストの日は明日だ。予測可能だ。」
火曜にも何もなかったら、同様にテストは水曜日だと先生に言えばいいのです。いずれ金曜日になるまでに先生は生徒の主張の通り翌日にテストを行うか、あるいは金曜日までテストをしないかのどちらかを選ばなければなりません。どちらにしても先生のはじめの主張に矛盾します。

はやい話が、毎日「明日がテストの日だ」と先生に言い続ければいいのです。そんなのアリか? という気もしますが、この点は先にきちんと確認してあります。「『どの段階でも』予測してよい」のでした。


まとめ

こうなると結局のところパラドックスでもなんでもなく、単にはじめの先生の発言に矛盾があっただけでした。楚国の矛と盾を売る人の発言と同レベルです。

また、生徒もきちんと先生に矛盾点を指摘することができます。めでたしめでたし。

上記のような方法で先生の発言の矛盾を導き出すような解決法は、web上をざっと調べた限りでは見つかりませんでした。この主張に問題があると思う人がいましたら、ぜひ連絡をお願いします。


「抜き打ちテストのパラドックス」を撃破する」への2件のフィードバック

  1. freejog

    先生に「月曜日にテストが行われる。予測可能だ」だと伝えるところですが、賢い生徒の考察によると「来週に抜き打ちテストを行うことが出来ない」ということになるはずで、月曜日にテストが行われると「予測」できるわけではないと思うのですが、いかがでしょうか。

    返信
  2. pisasiburi

    先ほどの投稿、勘違いがありましたので取り消します。すいませんでした。できましたら削除でお願いします。

    どの日にテストがあっても予測できてしまうと生徒が論理的に導き、
    だからテストはできない と結論する
    しかし、その情報によれば「テストはない」と予測することになり 従って、テストができることになる
    というのが先生の反撃ですから、毎日予測し続ける作戦を取っても、事態は変わらないはずです。
    明日がテストだと予測できますよ、だからテストはできません
    と言った瞬間、テストが無い と予測することになり、よってテストができることになる。
    しかし、さらに
    生徒が徹底的に論理的な読みを進めるなら、
    先生がそのように反撃することも予測でき、先生がテストをやると予測できたから、テストはできないですよ と言える。
    しかし、テストできない と判断したなら、テストはできる
    とどこまでもループしてしまう
    そこが、このパラドックスの肝だと思います。

    返信

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